読みもの
2025.09.27
寺嫁日記〜令和7年夏号掲載〜
「親子の挑戦」
毎年6月7月と暑くなるたびにお寺はそわそわし始めます。住職も「今年の夏も暑いかなー、早くお盆の準備に取り掛からないとな」とぼそぼそとつぶやき始めます。私もこの時期になると夏をどうやって乗り越えようか、ということが頭の中をめぐります。
そんなお寺が一番忙しくなるお盆。今年は長男が「傘踊りがしたい」と、とんでもないことを言い始めました。去年の夏、子どもたちにも少しは地元の夏の風物詩を見せてあげたいなと思い、私も住職も最後の体力を振り絞って8月14日しゃんしゃん祭りへ連れて行きました。すると長男の通う小学校の連の息のあった見事な演舞を見ることができました。その様子を見ていた長男は「かっこいいな、やってみたな」と言うようになりました。お寺としては一年で一番忙しい時期。「こまった・・・」しかし長男は「絶対にやりたい!頑張るから!」と譲りません。住職も参加した経験はもちろんないので「大丈夫かな」と子どもの心配はもちろんお寺の心配もし悩んでいました。しかし、子どもの間しかできない経験かもしれません。「このチャンスを逃したら・・・何事もあきらめずに頑張って欲しい。よし。せっかくだからやってみよう」と親子で決断をし、挑戦してみることにしました。子どもの間しかできない経験かもしれませんし、鳥取の文化も体験してほしいという思いでした。
連に入り、練習が始まりました。長男も毎日熱心にタブレットを見ながら練習をしています。全体練習というものもありものすごい熱量。今までしゃんしゃん祭りに行ったこともなく、テレビでしか見る機会のなかった住職は「こんなに練習するんだな」と驚いている様子でした。曲数も一曲ではありません。足の角度、目線の向き、細かい動き一つ一つ覚えていきます。これをあの暑い中、3時間。長男は踊りきれるのだろうか、そして私はついて回れるだろうかという不安に駆られています。そして最大の問題。どうやって当日会場まで連れていくのか。集合時間はまだお寺で法要をお勤めしている時間。「これはまずい、そんなに早く集合するの?どうしよう・・・」そんな時「一緒に行こうよ」と友達の保護者の方に声をかけていただきました。本当にありがたいことです。しかも、真逆の方向から来てくださると。もしかしたら諦めないといけないかなとも考えていましたが、周りに助けられていると実感しました。
このお便りが皆様のもとへ届く頃は、本番へ向けた大詰めの練習の時期だと思います。私も住職もお寺のことでそわそわ、ばたばたしている、お盆のこの時期。お寺にお参りいただいたとき、もしかしたら長男が「しゃんしゃん」と練習をする鈴の音が聞こえているかもしれません。親子の挑戦。この夏も頑張っていきます。